【監修者情報】
この記事は、内分泌・糖尿病の専門家である鈴木 正敏 医師の監修を受けています。
鈴木 正敏 医師
所属/役職: 日本内分泌学会 専門医 / 大学病院 内分泌・代謝内科 非常勤講師
専門分野: 内分泌学、糖尿病学、肥満症の薬物療法
資格: 日本内科学会 総合内科専門医、日本糖尿病学会 専門医・指導医
【後悔する前に】リベルサスで本当に痩せる?医師がダイエット目的での使用を推奨しない3つの理由
SNSで話題の「飲むだけダイエット」、リベルサス。楽して痩せたいけど、薬だから副作用が怖い…と感じていませんか?
結論として、2型糖尿病の治療目的以外での安易な使用は、専門家として推奨できません。
この記事では、糖尿病専門医である私がその明確な理由と、リベルサスが本来持つ効果、気になる費用、そして薬に頼らない安全な代替案まで、正直に、そして分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、以下の3点が明確になります。
- なぜダイエット目的での使用が推奨されないのか、その本当の理由
- 医薬品としてのリベルサスの本来の効果と、守るべき正しい使い方
- 保険が使える場合と使えない場合の、具体的な費用感の違い
なぜ「飲む痩せ薬」としてリベルサスが注目されるのか?
👉 このパートをまとめると!
本来は2型糖尿病の治療薬ですが、血糖値を下げる作用の一部に食欲抑制と体重減少効果があるため、ダイエット目的で注目されています。
「リベルサスで楽して痩せた」といった情報を、あなたも一度は目にしたことがあるかもしれません。本来は糖尿病の治療薬であるにも関わらず、なぜこれほどまでにダイエット目的で注目を集めているのでしょうか。その背景には、この薬が持つ2つの特徴があります。
「GLP-1」が食欲を抑える仕組みを簡単に解説
リベルサスは、「GLP-1受容体作動薬」という種類の薬です。この「GLP-1」は、もともと私たちの体内に存在するホルモンで、食事を摂ると小腸から分泌されます。
このホルモンが脳の満腹中枢に働きかけることで、私たちは「お腹がいっぱいだ」と感じます。
さらに、胃の動きを緩やかにして、食べたものの消化・吸収を遅らせる作用もあります。
リベルサスは、このGLP-1と似た働きをすることで、自然と食欲を抑え、満腹感を持続させる効果が期待できるのです。この副次的な作用が、「飲むと痩せる」と言われる主な理由です。
世界初の「経口GLP-1薬」という手軽さ
これまで、このGLP-1受容体作動薬は注射製剤しか存在しませんでした。つまり、毎日あるいは週に一度、患者さん自身が自己注射をする必要があったのです。
しかし、リベルサスは世界で初めて開発された「飲み薬」タイプのGLP-1受容体作動薬です。
この「注射ではなく、飲むだけでよい」という手軽さが、美容クリニックなどを中心にダイエット目的で利用されるケースが増え、注目を集める大きなきっかけとなりました。
【結論】専門医がリベルサスのダイエット目的使用をおすすめしない3つの理由
👉 このパートをまとめると!
副作用のリスク、高額な費用、そして中止後のリバウンドという3つの大きな課題があるため、安易なダイエット目的での使用は推奨できません。
手軽に痩せられるなら試してみたい、と思うお気持ちはよく分かります。しかし、私は糖尿病専門医として、明確な3つの理由から、ダイエットだけを目的としたリベルサスの使用を強く推奨しません。どうか、決断する前にこれらのリスクを正しく理解してください。
理由①:無視できない消化器系の副作用と重大なリスク
リベルサスは、残念ながら副作用と無縁ではありません。特に多いのが、吐き気、下痢、便秘、胃のむかつきといった消化器系の症状です。
✍️ 筆者の経験からの一言アドバイス
【結論】: 服用初期の吐き気に悩む方は少なくありません。生活に支障が出るほどの症状を自己判断で我慢するのは絶対にやめてください。
実は、私のクリニックで2型糖尿病の治療のためにリベルサスを処方した患者さんでも、「最初の1ヶ月は吐き気が辛かった」と仰る方は決して珍しくありません。多くは服用を続けることで体が慣れて改善していきますが、中には症状が強く出てしまい、お仕事や日常生活に影響が出てしまうケースもあります。安易に始めると、この初期症状で挫折してしまう可能性は十分に考えられます。
さらに、頻度は稀ですが、見過ごせない重大なリスクも存在します。
👨⚕️ 専門家からの補足解説
【ポイント】: 頻度は稀ですが、急性膵炎という重篤な副作用の報告があります。これは緊急入院が必要になることもある危険な状態です。
急性膵炎は、背中やみぞおちに激しい痛みが走り、吐き気を伴います。リベルサスの添付文書でも「重大な副作用」として明確に記載されており、万が一発症した場合は、命に関わる可能性もゼロではありません。2型糖尿病の治療という明確なメリットがある上で、医師の管理下で慎重に使うべき薬であり、適応外使用は、こうしたリスクをご自身で全て負うことになるのです。
リベルサスの添付文書でも「重大な副作用」として急性膵炎が明記されており、その危険性は公式に示されています。 この点からも、単なるダイエット薬として軽々しく使用すべきではないことがお分かりいただけるかと思います。
理由②:保険が効かない場合の高額な費用
2型糖尿病の治療として医師が処方する場合、リベルサスは健康保険の適用対象となります。
しかし、ダイエットなど美容目的で使用する場合は全額自己負担の「自由診療」となり、費用は非常に高額になります。
項目 | 保険診療(3割負担) | 自由診療(全額自己負担) |
---|---|---|
リベルサス7mg (30日分) | 約2,500円 | 15,000円 ~ 30,000円 |
診察料・検査料など | 別途 | 別途 |
合計(目安) | 月額 4,000円~ | 月額 20,000円~ |
✍️ 筆者の経験からの一言アドバイス
【結論】: 自由診療の高額な費用を払い続けても、期待した効果が得られない可能性があることを知っておくべきです。
表にあるように、自由診療では薬代だけで月額1万5千円から3万円以上かかることも珍しくありません。これに加えて、初診料や定期的な診察料、血液検査代などが必要になります。その費用を何か月も払い続けた結果、思うような体重減少効果が得られなかった、というケースも実際にあり得ます。
このように自由診療は高額になる傾向があります。一方で、海外の医薬品を個人輸入代行サービスを通じて購入するという選択肢も存在します。価格や利用者のレビューなどを比較検討したい方は、以下のリンクから詳細情報をご確認いただけます。ただし、個人輸入にはリスクも伴いますので、ご利用はご自身の責任において慎重にご判断ください。
理由③:やめたらリバウンドする可能性が高い
リベルサスによる食欲抑制効果は、あくまで薬を飲んでいる間だけの一時的なものです。薬の力で食事量が減り、体重が落ちたとしても、根本的な食生活や運動習慣が変わっていなければどうなるでしょうか。
答えは明白です。
服用を中止すれば、抑えられていた食欲は元に戻ります。
そして、以前と同じ食生活に戻ってしまえば、体重も元通り、あるいはそれ以上にリバウンドしてしまう可能性が非常に高いのです。リベルサスは、あなたの生活習慣を改善してくれる薬ではない、ということを理解することが重要です。
本来はどんな薬?2型糖尿病治療薬リベルサスの正しい知識
👉 このパートをまとめると!
2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する薬です。血糖値が高い時だけインスリン分泌を促すため、低血糖を起こしにくいのが特徴です。
ここまでリスクについてお話ししてきましたが、リベルサスは本来、2型糖尿病の患者さんにとって非常に優れた治療選択肢の一つです。誤解のないよう、医薬品としての正しい情報をお伝えします。
主な効果:血糖値の改善が第一の目的
リベルサスの最も重要な効果は、血糖値のコントロールを改善することです。
食事をして血糖値が上がると、すい臓からのインスリン分泌を促し、血糖値を下げる手助けをします。重要なのは、血糖値が高い時にだけ作用する点です。そのため、他のいくつかの糖尿病薬と比べて、単独使用では「低血糖」という危険な副作用を起こしにくいのが大きな特徴です。
海外の臨床試験(PIONEER-1)では、リベルサスを服用した患者さんにおいて、血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が有意に低下したという結果が報告されています。
正しい飲み方:起床後すぐ、空腹時に1錠を水で
リベルサスは、その効果を最大限に発揮するために、飲み方に非常に厳密なルールがあります。というのも、主成分であるセマグルチドは胃で吸収されにくく、食べ物や飲み物の影響を大きく受けてしまうからです。
この薬は成分の吸収が非常にデリケートなため、効果を最大限に引き出すには、以下の4つのルールを厳守することが重要です。
- タイミング: 1日のうちの最初の食事・飲水の前に、つまり起床してすぐの完全な空腹時に服用します。
- 錠剤: 1錠を、噛んだり割ったりせずにそのままの形で服用します。
- 水の量: コップ半分(約120mL)以下の水で服用します。水の量が多すぎると、薬の吸収が悪くなってしまいます。
- 服用後: 服用後、最低30分は、飲食および他の薬の服用を避けてください。
このルールを守れないと、薬の効果が十分に得られない可能性があります。この複雑さからも、誰もが手軽に扱える薬ではないことが分かります。
保険適用となる条件とは?
リベルサスが保険適用となるのは、医師によって「2型糖尿病」と正式に診断された場合のみです。
単に「血糖値が高め」「太り気味」といった理由だけでは、保険診療で処方することはできません。
どうしても気になる方へ… リベルサスに関するQ&A
👉 このパートをまとめると!
ダイエット目的の場合、自由診療クリニックで処方されますが、個人輸入は危険です。効果には個人差があり、誰でも痩せるわけではありません。
ここまで読んで、それでもまだ気になる、という方のために、よくいただく質問にお答えします。
Q. ダイエット目的ならどこで手に入るの? 個人輸入は安全?
A. ダイエット目的の場合、自由診療を行っている一部の美容クリニックやメディカルダイエット専門クリニックなどで、医師の診察のもと処方されます。
ただし、医師の診察を介さないインターネット上の「個人輸入」は絶対にやめてください。
海外から送られてくる薬には、有効成分が含まれていない偽造薬や、不純物が混入した粗悪品が紛れている危険性が指摘されています。重篤な健康被害につながる恐れが非常に高いため、絶対利用してはいけません。
Q. 3mg、7mg、14mgの違いは?
A. これは1錠に含まれる有効成分の量の違いです。
リベルサスは、副作用を軽減するため、最も少ない3mgから服用を開始します。4週間以上服用を続けた後、効果や副作用の状態を医師が評価し、必要であれば7mgへ、さらに同様に14mgへと段階的に増量していきます。自己判断で量を増やしてはいけません。
Q. 誰でも痩せますか? 痩せない人もいる?
A. 効果には大きな個人差があり、誰でも痩せるわけではありません。
薬の作用で食欲が落ちても、高カロリーな間食を続けたり、全く運動しなかったりすれば、当然体重は減りにくいです。リベルサスはあくまで食事療法や運動療法の補助であり、それだけで魔法のように痩せる薬ではないのです。
Q. 副作用の吐き気はいつまで続きますか?
✍️ 筆者の経験からの一言アドバイス
【結論】: 経験上、多くは2週間~1ヶ月程度で身体が慣れてきますが、これには個人差があります。我慢できない場合は必ず医師に相談してください。
実際に、服用初期は吐き気があったものの、1ヶ月後にはすっかり治まったという患者さんが多いです。しかし、中には症状がなかなか改善しない方もいらっしゃいます。自己判断で服用を中止したりせず、「つらい」と感じたら、必ず処方してくれた医師に連絡し、指示を仰ぐようにしてください。
リベルサスに頼る前に。専門医が推奨する安全な体重管理の3ステップ
👉 このパートをまとめると!
まずは食事の記録から始め、無理のない運動を習慣化し、必要であれば専門医に相談することが、健康的で持続可能な体重管理の王道です。
リベルサスのリスクをご理解いただいた上で、「では、どうすればいいの?」と思われたあなたへ。専門医として、薬に頼る前にぜひ試していただきたい、安全で持続可能な体重管理の王道とも言える3つのステップをご紹介します。
ステップ①:食事の見直し(レコーディングダイエットから)
いきなり厳しい食事制限を始める必要はありません。
まずは「あすけん」や「カロミル」といった無料の食事管理アプリを使い、お試しで「3日間だけ」自分が何を食べたかを記録することから始めてみませんか?
記録することで、自分が無意識に口にしている間食や、意外とカロリーの高い飲み物など、食生活の課題が客観的に見えてきます。課題が分かれば、「まずはこのお菓子をやめてみよう」といった具体的な改善策を立てやすくなります。
ステップ②:運動習慣の確立(1日10分の追加から)
「運動する時間がない」と感じる方は多いでしょう。しかし、ジムに通うような特別な運動だけが全てではありません。
例えば、
- エレベーターを階段に変えてみる
- 一駅手前で電車を降りて歩いてみる
- テレビを見ながら5分だけストレッチをする
このように、日常生活の中に「プラス10分」の運動を取り入れることから始めてみてください。小さな成功体験を積み重ねることが、運動を習慣化する一番の近道です。
ステップ③:肥満治療の専門家に相談する
ご自身の努力だけではどうしても体重が減らない場合、あるいは健康診断で「肥満」と指摘された場合は、一度専門医に相談することを強くお勧めします。
👨⚕️ 専門家からの補足解説
【ポイント】: 肥満は、単なる意志の弱さではなく、様々な要因が絡む「治療が必要な病気」である場合があります。
BMI(体格指数)が35以上の場合や、肥満に起因する健康障害(高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群など)を合併している場合は、保険適用で受けられる肥満治療もあります。専門医に相談することで、リベルサスよりも安全で、あなたにとって本当に適切な治療の選択肢が見つかる可能性は十分にあります。
自分一人で解決しようとせず、私たち専門家を頼ってください。
まとめ:リベルサスは魔法の薬ではない。まずは専門医へ相談を
👉 このパートをまとめると!
リベルサスは優れた2型糖尿病治療薬ですが、安易なダイエット目的での使用はリスクを伴います。健康的な体重管理のため、まずは医師に相談しましょう。
今回は、リベルサスについて、専門医の立場から解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度お伝えします。
- ダイエット目的のリベルサス使用は、「副作用・費用・リバウンド」という3つの大きなリスクがあるため非推奨です。
- リベルサスは、あくまで2型糖尿病の治療薬であり、正しい用法・用量を守る必要があります。
- 安全に痩せるためには、生活習慣の見直しが基本。困ったときは、一人で悩まず専門医に相談すること。
リベルサスは、決して「楽して痩せる魔法の薬」ではありません。あなたのそのお悩みが、もし健康に関わることであれば、なおさらです。
この記事で解説したリスクを十分にご理解いただいた上で、それでも価格や購入方法についてさらに情報が必要な方は、以下のサイトも参考になるかもしれません。
あなたの健康状態やライフスタイルに合った、最適な体重管理の方法を一緒に見つけましょう。ダイエットや生活習慣病に関するお悩みがあれば、一人で抱え込まず、ぜひお気軽に当院にご相談ください。
【免責事項】
この記事は、医療情報の提供を目的としており、診療行為の代わりとなるものではありません。リベルサスの使用を含む、いかなる治療法の選択においても、必ず事前に医師や薬剤師にご相談ください。自己判断での医薬品の使用は、重大な健康被害を招く可能性があります。
コメント