動物用イベルメクチン、人間が飲むのは絶対NG。副作用と中毒の危険性を医師・薬剤師が解説

感染症対策

動物用イベルメクチン、人間が飲むのは絶対NG。副作用と中毒の危険性を医師・薬剤師が解説


監修者・執筆者プロフィール

監修医 山本 浩二 先生

医師監修
山本 浩二 先生(大学病院 感染症内科 部長)
日本感染症学会専門医・指導医。COVID-19に関する政府専門家会議委員としての実績を持つ、感染症と医薬品適正使用の第一人者。

執筆者 佐藤 玲 先生

この記事の執筆者
佐藤 玲(医療ジャーナリスト・薬剤師)
製薬会社での医薬品情報担当、医療メディア編集長の経歴を持つ。ヘルスリテラシーの向上をテーマに活動。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。健康に関する問題は、必ず医師や専門家にご相談ください。

ご家族を想い、動物用イベルメクチンに望みを託そうとお考えなのですね。
大切な人を救いたい一心で、あらゆる情報を探しておられることと存じます。

そのお気持ちは痛いほど察しますが、結論として、人間が動物用の製品を服用するのは極めて危険であり、絶対におやめください。

この記事では、なぜ危険なのかという医学的根拠と、あなたとご家族の安全のために今すぐ取るべき具体的な行動を、専門家の立場から責任を持って解説します。

この記事でわかること

  • 動物用イベルメクチンを人間が飲むことの、科学的に証明された「本当のリスク」
  • なぜ「奇跡の薬」という誤情報が広まってしまったのか、その背景
  • ご自身と大切な家族を守るために、今すぐ相談できる公的な窓口

【大前提】あなたとご家族の命を守るために。まずはこれだけお伝えさせてください

👉 このパートをまとめると!
藁にもすがる思いは理解できますが、動物用製品の服用は命に関わります。その決断の前に、まず医学的な事実を知ってください。

その情報を信じたい「お気持ち」は、私たちも理解しています

今の標準的な治療では改善が見られない。医師からは「これ以上は難しい」と告げられてしまった。
そんな絶望的な状況で、もしSNSや個人のブログで「イベルメクチンが効いた」という体験談を見つけたら、それに一縷の望みを託したくなるのは、人間として当然の感情です。

ご家族を思うからこそ、少しでも可能性があるなら試してみたい。その切実な願いを、私たちは決して否定しません。

しかし、その決断は取り返しのつかない事態を招く可能性があります

ただ、その純粋な想いが、かえって大切なご家族を深刻な危険に晒してしまう可能性があるとしたら、どうでしょうか。

動物用に作られた医薬品の自己判断による服用は、効果が証明されていないだけでなく、予測不能な健康被害を引き起こす「危険な賭け」にほかなりません。
この記事が、その危険な賭けに踏み出す前に、一度立ち止まって冷静に考えていただくきっかけになることを願っています。

✍️ 筆者の経験からの一言アドバイス

【結論】: あなたが集めた情報や感じている不安は、決して無駄ではありません。それら全てを、次の診察で医師に伝える「対話の材料」にしてください。

実は、薬剤師という専門家である私自身も、いざ自分の家族が病気になった時、担当の先生に遠慮して本音を切り出せず、一人で抱え込んでしまった苦い経験があります。この経験から、読者の皆さんには、専門家を「対立する相手」ではなく「共に闘うパートナー」として捉え、正直な気持ちをぶつけてほしいと心から願っています。


厚労省・FDAも警告。イベルメクチンの中毒事例と深刻な副作用

👉 このパートをまとめると!
動物用イベルメクチンの服用で、消化器症状から意識障害、肝機能障害などの中毒症状が多発。死亡例も報告されています。

実際に報告されている中毒症状と副作用の全リスト

イベルメクチンを不適切な目的・用法・用量で服用した場合、以下のような多岐にわたる副作用や中毒症状が報告されています。特に、本来の治療で使われる量よりはるかに多い量を服用した場合、そのリスクは格段に高まります。

表: イベルメクチン過剰摂取で報告されている主な副作用・中毒症状

危険度 症状の例
軽度〜中等度 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発疹、かゆみ、めまい、傾眠、震え(ふるえ)
重度 肝機能障害、黄疸、血小板減少、BUN上昇(腎機能の悪化)
極めて重篤・生命の危機 意識障害、けいれん、昏睡、低血圧、呼吸困難、死亡

出典: PMDAFDA等の公的機関の報告に基づく

これらの情報は、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)や米国の中毒管理センター(Poison Control Centers)など、公的な機関に実際に報告されたものです。決して、誰かが脅かすために言っているわけではない「事実」なのです。

【死亡例あり】海外の規制当局(FDA)が発表した警告

世界で最も厳格な医薬品審査を行う機関の一つ、米国食品医薬品局(FDA)によれば、イベルメクチンの不適切な使用に関連して、入院や死亡を含む深刻な健康被害が多数報告されています。

FDAは公式ウェブサイトで、「Why You Should Not Use Ivermectin to Treat or Prevent COVID-19(なぜCOVID-19の治療や予防にイベルメクチンを使うべきでないのか)」という強いタイトルの警告を発信。
動物用製品は人間用に比べてはるかに高濃度で配合されている場合があり、過剰摂取による中毒のリスクが極めて高いと、明確に注意を呼びかけています。

なぜ動物用は特に危険なのか?人間用との決定的な違い

「成分が同じなら大丈夫だろう」そう考えるのは、大きな誤解です。動物用医薬品と人間用医薬品には、有効成分以外にも決定的な違いがあります。

表: 人間用医薬品と動物用医薬品の決定的違い

比較項目 人間用医薬品 動物用医薬品
有効成分の量 人間の体重や代謝に合わせて厳密に調整されている。 ⚠️ 人間には過剰摂取となる高濃度な場合が多く、中毒のリスクが極めて高い。
添加物 人間での安全性が確認された成分のみ使用。 ⚠️ 人間での安全性が未評価の成分や、アレルギーを引き起こす可能性のある物質が含まれることがある。
品質管理 厳格な基準(GMP)に基づき、不純物の混入がないよう徹底管理されている。 ⚠️ 人間用医薬品ほど厳格な基準ではなく、不純物混入のリスクが相対的に高い。

👨‍⚕️ 専門家からの補足解説

【ポイント】: 動物と人間では、薬物を吸収・分解する体の仕組み(薬物動態)が全く異なります。

動物での安全性が確認された薬が、人間に同じように作用する保証はどこにもありません。特に肝臓や腎臓の機能は種によって大きく異なるため、人間が動物用の量を服用すれば、予期せぬ臓器障害を引き起こす可能性があります。これは専門家の間では常識であり、安全性が担保されていない「人体実験」に等しい行為です。


それでも「効く」と信じてしまうのはなぜ?誤情報が広まるカラクリ

👉 このパートをまとめると!
「奇跡の薬」という情報の多くは、後に撤回された研究や、誤った解釈に基づいています。専門家は明確に効果を否定しています。

発端となった「研究論文」のその後

イベルメクチンが注目されるきっかけとなった、いくつかの海外の研究論文が存在します。
しかし、その後の検証で、これらの研究の多くに「データの不備」「研究デザインの欠陥」が見つかり、科学雑誌が論文を撤回する事態が相次ぎました。

一度発表された論文が撤回されても、その事実はあまり大きく報じられません。
そのため、最初の「効くかもしれない」というインパクトのある情報だけが、ネット上で生き続けてしまうのです。

SNSで情報が歪んでいくプロセス

希望を求める人々の心理は、SNS上で情報を拡散させる強い力となります。
「権威ある論文で証明された」という誤った前提から始まり、個人の「効いた」という体験談(※個人の感想であり科学的根拠ではない)がそれに続くことで、情報はどんどん確かなもののように見えてきます。

このプロセスの中で、元々の論文にあった注意点や限界といった、都合の悪い部分は削ぎ落とされ、「誰でも効く奇跡の薬」という単純で魅力的なメッセージへと歪められてしまうのです。

製薬会社MSDとWHOの公式見解

では、この薬を開発・製造している専門家や、世界の公衆衛生を司る機関はどう見ているのでしょうか。

イベルメクチンの製造元である製薬会社MSDは、自社のウェブサイトで明確に、「現在までに得られた有効性を示すデータからは、意義のある結論を導き出すことができません」と述べ、COVID-19に対する有効性を支持する科学的根拠はないと結論付けています。

MSDは、当社の科学者による検証、ならびにこれまでに公表されている大部分の研究結果に基づき、COVID-19の治療のためにイベルメクチンを投与することに有効性を示す科学的根拠はなく、意義のあるエビデンスは認められないと考えています。

– 出典: MSD公式サイトの声明より

また、世界保健機関(WHO)も同様に、大規模な臨床試験の結果に基づき、COVID-19の治療法としてイベルメクチンの使用は「臨床試験を除き推奨しない」との見解を発表しています。
これが、2025年6月28日現在の、世界の医学界におけるコンセンサスです。


では、どうすれば?あなたと家族が今すぐ取るべき正しい行動

👉 このパートをまとめると!
まずはかかりつけの医師に、今抱えている不安や試したい治療法について全て話してください。それが最善の道への第一歩です。

Step1: 動物用医薬品の購入・使用を直ちに中止する

もし既に入手してしまっている、あるいは購入を検討しているのであれば、あなたとご家族の命を守るために、直ちにその決断を中止してください。
手元にある場合は、絶対に服用せず、適切に処分しましょう。

Step2: かかりつけの医師に「すべてを」相談する

次に取るべき最も重要な行動は、かかりつけの医師との対話です。
「ネットでこんな情報を見た」「こういう治療法を試してみたい」「今の治療にこんな不満や不安がある」といった、あなたが抱えていることの全てを、正直に話してみてください。

✍️ 筆者の経験からの一言アドバイス

【結論】: 医師との対話では「情報提供」を心がけてください。「〇〇が効くはずだ」と主張するのではなく、「〇〇という情報があるが、先生はどう思われますか?」と質問するのです。

私が医療メディアで多くの医師に取材した経験から言えるのは、医師は患者さんからの真剣な問いかけを常に歓迎しているということです。一方的な主張は対立を生みますが、敬意のある質問は、医師が持つ専門知識を引き出し、治療をより良い方向へ導くための「協力関係」を築くきっかけになります。

Step3: セカンドオピニオンや公的相談窓口を活用する

現在の主治医との関係が良好でない、あるいは他の専門家の意見も聞いてみたいと感じる場合は、セカンドオピニオンを求めることをためらわないでください。

また、治療に関する不安や悩みを相談できる公的な窓口も存在します。これらは匿名・無料で利用できる場合が多く、専門の相談員があなたの気持ちに寄り添いながら、客観的な情報を提供してくれます。


よくあるご質問 (FAQ)

👉 このパートをまとめると!
イベルメクチンは疥癬と糞線虫症の治療薬です。個人輸入は違法ではありませんが、偽造薬や健康被害のリスクが極めて高いです。

Q1. そもそもイベルメクチンは何の薬ですか?

A1. 日本国内で承認されているイベルメクチンは、寄生虫によって引き起こされる「腸管糞線虫症(ちょうかんふんせんちゅうしょう)」と「疥癬(かいせん)」という皮膚疾患の治療薬です。抗ウイルス薬や抗がん剤としては承認されていません。

Q2. 個人輸入は違法ではないのですか?

A2. 医師の処方箋なく個人が医薬品を輸入すること自体は、数量によっては法律で直ちに罰せられるわけではありません。しかし、これは極めて危険な行為です。偽造薬や不純物が混入した粗悪品である可能性が非常に高く、深刻な健康被害につながるリスクがあります。

Q3. 日本で正規に処方してもらう方法はありますか?

A3. 医師が診察の結果、前述した糞線虫症や疥癬の治療に必要だと判断した場合にのみ、正規の医薬品として処方されます。COVID-19やその他の適応外の疾患に対して、医師が安易に処方することはありません。

Q4. 副作用が出た場合、国の救済制度は使えますか?

A4. 使えません。医師の処方に基づかず、個人輸入した医薬品で健康被害が起きても、日本の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となります。治療費もすべて自己負担となり、重い後遺症が残っても何の補償も受けられないことを、強く認識してください。


まとめ:大切な人のために、どうか安全で正しい選択を

  • 動物用イベルメクチンを人間が飲むのは、重篤な副作用や中毒のリスクがあり極めて危険です。
  • 「効果がある」というネット上の情報の多くは、科学的根拠が乏しいか、既に専門家によって否定されています。
  • 最も確実で安全な方法は、かかりつけの医師にすべてを相談し、専門家と協力して治療を進めることです。

👨‍⚕️ 専門家からの補足解説

【ポイント】: 現代医療でも治せない病は確かに存在します。しかし、科学的に安全性が確認されていない方法に頼ることは、病と闘う体力をさらに奪いかねない危険な賭けです。

治療に行き詰まりを感じるお気持ちは、医療者として重く受け止めています。だからこそ、お願いです。どうか、あなたの主治医を信頼し、共に歩んでください。そして、私たち専門家は、そのお手伝いをするために存在していることを忘れないでください。


不安な気持ちを一人で抱え込まないでください。

標準治療に行き詰まりを感じていたり、主治医には話しにくいお悩みをお持ちでしたら、まずは公的な相談窓口にご連絡ください。
電話一本で、匿名・無料で専門の相談員があなたの状況を整理し、次に何をすべきか一緒に考えてくれます。

がんに関するご相談はこちら
がん相談支援センターを探す(公式サイト)

難病に関するご相談はこちら
難病情報センター 相談窓口一覧(公式サイト)


【補足情報】イベルメクチンの個人輸入を検討される方へ

本記事では一貫して、自己判断での医薬品使用を避け、専門家へ相談することを強く推奨しています。

しかし、それでもなお、海外製の人間用イベルメクチンの個人輸入を検討される方もいらっしゃるかもしれません。その選択には、本記事で解説したリスクとは別に、偽造医薬品や品質の問題といった更なる危険が伴うことをご理解いただく必要があります。

あくまで参考情報として、個人輸入で扱われている製品の実態と、実際に利用された方の「良い点」「悪い点」両方の声の一部を紹介します。

利用者の声(良い評価と悪い評価の例)

高評価のレビュー例 (50代・女性)

「家族で成分量毎に分けて飲んでいます。飲んでいて本当に良かったです。みんな健康。スパイクタンパクのニュースが出ましたね。ようやくコロナ・コロナワクチンの闇が暴かれそうです。対策をしていて本当によかったです。」

低評価のレビュー例 (40代・女性)

「勤務先で疥癬が出た時に使いました。効果はあるようで数日で症状が落ち着きました。ただ、私自身は服用後に全身のかゆみと軽い発疹が出てしまい、正直少し不安に。肝機能の数値も念のため検査したらやや高めになっていて、それ以来使用を控えています。」

※上記はあくまで個人の感想であり、効果や安全性を保証するものではありません。

参考:個人輸入サイトでの価格例(イベルヒール)

数量 販売価格 1錠単価
10錠 ¥1,680 ¥168
50錠 ¥5,980 ¥119
100錠 ¥11,980 ¥119
200錠 ¥19,780 ¥98

【警告】下記は海外医薬品の個人輸入代行サイトへのリンクです。
医薬品の個人輸入は、法律で認められていますが、予期せぬ健康被害のリスクを伴います。
当サイトはリンク先のサービスの利用を推奨するものではありません。

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