【専門医監修】40代男性のその不調、更年期かも？症状セルフチェックと次の一歩

最近、どうも疲れが抜けない、集中できない…。その不調を単なる年齢のせいだと諦めていませんか。40代から感じる原因不明の不調は、テストステロンの低下による「男性更年期（LOH症候群）」かもしれません。この状態は決して個人の弱さではなく治療可能な医学的状態です。この記事ではご自身の状態を客観的に知るためのセルフチェックから具体的な次の一歩まで専門医の立場から分かりやすく解説します。

• 国際的な基準を用いた17項目のセルフチェック
• 不調の根本原因であるテストステロンの役割
• スコアに応じた具体的な対処法と相談先

つらいのはあなたのせいではない：多くの40代男性が直面する“見えない壁”

👉 このパートをまとめると！
その不調は個人の弱さではなく社会的なプレッシャーも一因です。一人で抱え込まず正しい知識を得ることが解決の第一歩になります。

一人で抱え込んでいませんか。パフォーマンスの低下や気分の落ち込みを感じながらも「男だから我慢すべきだ」と自分を追い込んでしまう方は少なくありません。その気持ちはよく分かります。

「男だから我慢すべき」というプレッシャー

内閣府の調査によれば、今なお多くの男性が「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」といった伝統的な役割意識を持っていることが示されています。このような社会的な規範（スティグマ）が、知らず知らずのうちに私たちにプレッシャーを与え、心身の不調を認めて助けを求めることを難しくしているのです。

社会は変わり始めている：企業も注目する「男性の健康」

しかし、この状況は変わり始めています。個人の健康問題が企業の生産性にも影響を与えるという認識が広まり、男性特有の健康課題を支援する動きが出てきました。例えば、株式会社ニチレイは2025年10月から「男性従業員の更年期障害を支援するプログラム」を導入すると発表しています。あなたの悩みはもはや個人的な問題ではなく社会全体で取り組むべき課題なのです。

✍️ 筆者（専門家）の経験からの一言アドバイス

【結論】: LOH症候群の治療を妨げる最大の壁は、病気そのものより「男だから」と我慢してしまう心です。

私が診察した40代の管理職のAさんも、これまで難なくこなせていた資料作成に時間がかかったり、会議で集中力が続かなかったりと、明らかなパフォーマンスの低下に悩み、うつ病を疑って心療内科に通っていました。適切な治療で活力を取り戻したAさんは「もっと早く相談すればよかった」と仰っていました。この経験から、皆さんには同じように遠回りをしてほしくないと心から願っています。

これって自分も？男性更年期（LOH症候群）の主な症状

👉 このパートをまとめると！
症状は「身体」「精神」「性機能」の3つに大別されます。複数の症状が当てはまる場合は注意が必要です。

LOH症候群の症状は多岐にわたりますが、大きく3つのカテゴリーに分けられます。ご自身の状態と照らし合わせてみてください。

身体のサイン：疲れ、ほてり、眠れない

• 全身の倦怠感、無気力
• 筋力の低下、筋肉痛、関節痛
• ひどい発汗、ほてり
• 睡眠の悩み（寝つきが悪い、眠りが浅い）
• 内臓脂肪の増加、肥満

心のサイン：イライラ、不安、意欲の低下

• イライラ、気分の浮き沈み
• 不安感、抑うつ気分
• 意欲や集中力、記憶力の低下
• 「人生のピークは過ぎた」と感じる

性機能のサイン：性欲の低下、ED

• 性欲（リビドー）の低下
• 勃起力の低下（ED）
• 早朝勃起の回数減少

男性更年期の症状は、大きく分けて「身体」「精神」「性機能」の3つのグループに関連するサインとして現れます。これらの症状は互いに影響し合うことも少なくありません。例えば、身体的な不調が精神的な落ち込みにつながったり、その逆のケースも見られます。

まずは現状把握から。国際基準のセルフチェック（AMSスコア）

👉 このパートをまとめると！
17の質問に答えるだけでご自身の症状の重症度が客観的にわかります。まずは正直に現在の状態をチェックしてみましょう。

ご自身の症状がどの程度なのか客観的に把握するために、国際的に広く用いられているセルフチェックシートを使ってみましょう。

AMSスコアとは？

AMSスコアは、加齢男性の心身の症状を評価するために開発された、信頼性の高い質問票です。このスコアを用いることで、あなたの現在の状態を数値化して評価できます。

【実践】17項目でチェックしてみよう

以下の17の質問について、ご自身の現在の症状に最も近い選択肢の点数を確認し、最後に全項目の点数を合計してみてください。

スコアの評価方法：あなたの重症度は？

算出された合計点数を基に、以下の基準でご自身の症状の重症度を評価します。

なぜ不調が？テストステロンとLOH症候群の基礎知識

👉 このパートをまとめると！
不調の主な原因は男性ホルモン「テストステロン」の減少です。この減少は加齢やストレスで誰にでも起こりうる自然な変化です。

なぜこのような不調が起こるのでしょうか。その鍵を握るのが「テストステロン」という男性ホルモンです。

LOH症候群とは？

LOH症候群は「加齢男性性腺機能低下症候群」の略称です。加齢や強いストレスなどによってテストステロンが減少し、心身に様々な症状が現れる状態を指します。

元気の源「テストステロン」の役割

テストステロンは、いわば男性の心と体の“エンジンオイル”のような存在です。筋肉や骨を強く保ち、意欲や決断力を高め、性機能を維持するなど、男性が若々しく活力に満ちた毎日を送るために不可欠な役割を担っています。このエンジンオイルが減ってしまうと、心身の様々な機能に不調が生じるのです。

うつ病との違いは？

LOH症候群の精神症状はうつ病とよく似ているため、間違われやすい傾向があります。しかし、LOH症候群の背景にはテストステロンの低下という明確な身体的要因が存在します。自己判断で「うつ病だ」と決めつけず、専門医に相談して原因を正しく突き止めることが非常に重要です。

✍️ 筆者（専門家）の経験からの一言アドバイス

【結論】: 気分の落ち込みをうつ病と自己判断せず、ホルモンの問題を疑う視点を持つことが早期回復の鍵です。

実際に、うつ病と診断されて長年治療を続けても改善しなかった患者さんが、私の外来でテストステロンの低下を発見し、ホルモン補充療法で劇的に元気を取り戻したケースは少なくありません。正しい原因にアプローチすれば、つらい症状は改善する可能性があります。

どうすれば？専門医が行う治療法と相談先

👉 このパートをまとめると！
治療の基本は生活習慣の改善です。症状が重い場合はホルモン補充療法などの専門的な治療も選択肢となります。

セルフチェックで症状が気になった場合、具体的にどうすればよいのでしょうか。専門医が行う検査や治療法について解説します。

まず何科へ行くべき？

男性更年期の症状で相談する場合、第一選択となる診療科は泌尿器科です。男性ホルモンや性機能に関する専門家が在籍しています。もし近くに泌尿器科がない場合は「男性更年期外来」を標榜するクリニックや、かかりつけの内科で相談してみるのも良いでしょう。

病院で行う検査：AMSスコアと血液検査

医療機関では、まず問診でAMSスコアなどを用いて自覚症状を詳しく確認します。その上で、診断を確定するために血液検査を行い、血中の遊離テストステロン値を測定します。この主観的な症状と客観的なデータの両方を組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。

主な治療法の選択肢

治療は症状の重症度に応じて段階的に行われます。

1. 生活習慣の改善: バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理が全ての治療の基本です。
2. 漢方薬: 特定の症状を緩和するために、体質に合った漢方薬が処方されることがあります。
3. ホルモン補充療法（TRT）: 血液検査で明確なテストステロンの低下が確認され、症状が重い場合に検討されます。注射によってテストステロンを補充する、LOH症候群の根本的な治療法の一つです。

なお、性機能に関する症状が特に気になる場合は、ED治療薬の選択肢についても専門医と相談することが可能です。

まとめ：スコア別・あなたに最適な「次の一歩」

👉 このパートをまとめると！
セルフチェックの結果に基づき今すぐできることから始めましょう。大切なのは一人で抱え込まずに行動を起こすことです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。ご自身の状態を客観的に理解できた今、大切なのは次の一歩を踏出すことです。

• 軽度（27〜36点）だったあなたへ：
  まずは生活習慣の見直しから始めてみましょう。バランスの良い食事を心がけ、週に2〜3回、30分程度のウォーキングから始めてみるのがおすすめです。
• 中等度（37〜49点）だったあなたへ：
  専門医への相談を強く推奨します。あなたの不調には医学的なサポートが有効かもしれません。一度、泌尿器科などで現状を相談してみませんか。
• 重度（50点以上）だったあなたへ：
  どうか一人で悩まず、速やかに専門医を受診してください。適切な治療を受けることで、つらい症状が改善し、以前のような活力ある毎日を取り戻せる可能性は十分にあります。泌尿器科の受診に抵抗があるかもしれませんが、「健康診断の結果相談」といった形で予約するのも一つの方法です。大切なのは、最初の一歩を踏み出すことです。

あなたのその一歩が、より良い明日へと繋がることを心から応援しています。

よくある質問（FAQ）

Q. 男性の更年期は何歳から何歳までですか？

A. 一般的に40代後半から始まることが多いですが、個人差が大きく、30代で症状が出る方もいれば、60代以降に始まる方もいます。発症年齢に明確な定義はありません。

Q. イライラだけが特にひどいのですが、これも更年期ですか？

A. はい、その可能性はあります。LOH症候群の症状の現れ方は人それぞれで、精神症状だけが強く出る方も少なくありません。ただし、他の病気の可能性もあるため、専門医への相談をおすすめします。

Q. 治療に保険は適用されますか？

A. 医師がLOH症候群と診断し、治療が必要と判断した場合は、ホルモン補充療法などの治療に健康保険が適用されます。まずは医療機関でご相談ください。

(免責事項)

本記事は2025年10月15日時点の情報に基づき作成された情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療を代替するものではありません。体の不調を感じる場合は、必ず医療機関にご相談ください。