【薬剤師監修】人間用駆虫薬は通販で買える？市販薬がない理由と唯一安全な入手方法

「子どものお腹の虫下し、昔は薬局で買えたのに…」
「ネットで見かける海外の薬、買っても本当に大丈夫？」

お子さんの体調を心配し、人間用の駆虫薬を探している中で、多くの疑問や不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。

結論からお伝えします。現在、人間用の駆虫薬を安全に入手する方法は「病院で医師の診察を受け、処方してもらう」こと、ただ一つです。

この記事では、長年ドラッグストアの現場に立ち、多くの親御さんの相談に応じてきた薬剤師の立場から、以下の3点を分かりやすく、そして誠実に解説していきます。

• なぜ今、駆虫薬がドラッグストアなどの市販で買えないのか、その明確な理由
• インターネット通販（個人輸入）に潜む、厚生労働省も警告する具体的なリスク
• 本当に安全な駆虫薬の入手手順と、受診すべき診療科

この記事を読み終える頃には、あなたの不安は解消され、家族の健康を守るための、最も確実な一歩を踏み出せるはずです。

【結論】お子さんのために。人間用駆虫薬は、まず病院で相談を

「すぐにでも薬が欲しいのに、病院は時間がかかる…」そのお気持ちは、痛いほどよく分かります。

ですが、駆虫薬は、単にお腹の虫を追い出せばよい、という単純な薬ではありません。
お子さんの症状が、本当に寄生虫によるものなのか、あるいは別の原因が隠れていないかを、まず専門家である医師が診断することが何よりも重要だからです。

この記事では、なぜそれほどまでに医師の診断が重要なのか、そして、安易な通販にどのような危険が潜んでいるのかを、一つひとつ丁寧に解き明かしていきます。
あなたの不安に寄り添い、安全なゴールまでを照らす羅針盤として、ぜひ最後までお読みください。

なぜ？市販の人間用駆虫薬が薬局（ドラッグストア）から消えた理由

「昔は薬局で買えたはず」というあなたの記憶は、決して間違いではありません。
かつては「パモキサン錠」や「コンビタントリン錠」といった、ぎょう虫などの寄生虫に対する市販薬が存在していました。

しかし、これらの市販薬は、製造上の都合などから、現在ではすべて販売中止となっています。

そのため、今日のドラッグストアや薬局で、薬剤師に「人間用の駆虫薬をください」と相談しても、「医師の処方箋がなければお渡しできません」という答えが返ってくるのです。
これは、決して意地悪で断っているわけではなく、単純に「処方箋なしで販売できる駆虫薬が存在しない」という事実に基づいています。

「駆虫薬 人間用 通販」の実態と、あなたが知るべき3つのリスク

市販薬がないと知ると、次に考えたくなるのがインターネットでの購入かもしれません。
実際に検索すると、「メベンダゾール」や「イベルメクチン」といった海外の駆虫薬を販売する通販サイトが見つかります。

しかし、ここで立ち止まってください。
これらの行為の正体は、医薬品の「個人輸入」と呼ばれるものであり、そこには専門家の立場から決して見過ごすことのできない、3つの重大なリスクが潜んでいます。

リスク①：約4割が偽造品。深刻な健康被害の危険性

厚生労働省は、海外からの医薬品の個人輸入について、かねてより強い警告を発しています。
その最大の理由は、偽造医薬品による健康被害のリスクです。

実際に、製薬会社4社（ファイザー株式会社、バイエル薬品株式会社、日本新薬株式会社、日本イーライリリー株式会社）が合同で行った調査によれば、インターネットを介して入手したED治療薬の約4割が偽造品であったと報告されています。

偽造医薬品には、有効成分が全く入っていなかったり、逆に入りすぎていたり、あるいは表示とは全く異なる不純物が混入していたりするケースがあります。
そのような薬を、大切なお子さんやご自身の身体に入れることの危険性は、想像に難くないでしょう。

リスク②：医師の診断なしに服用する危険性

リスク③：通販サイトでよく見る「メベンダゾール」「イベルメクチン」とは？

通販サイトで販売されている「メベンダゾール」や「イベルメクチン」といった成分は、決して素人が自己判断で使えるような手軽な薬ではありません。
これらは、医師が患者の状態を慎重に診断した上で、その監督下においてのみ使用されるべき、専門性の高い医療用医薬品です。
どのような薬にも副作用のリスクはありますが、専門知識なくしての使用は、その危険性を何倍にも高めてしまいます。

【完全ガイド】病院で安全な駆虫薬を処方してもらうための3ステップ

「そうは言っても、病院はやっぱりハードルが高い…」と感じるかもしれません。
でも、大丈夫です。以下の3つのステップに沿って進めれば、誰でも確実に、そして安全に、必要な治療を受けることができます。

Step1: 診療科を選ぶ

まず、受診する診療科を選びましょう。お子さんの場合は「小児科」、大人の場合は「内科」が基本です。皮膚にかゆみなどの症状が強く出ている場合は「皮膚科」でも相談できます。

Step2: 医師に症状を伝える

診察では、不安に思っていることを素直に伝えましょう。「いつから、どんな症状があるか」「お尻を痒がる、夜眠れていないようだ」など、具体的な状況を伝えることで、医師はより正確な診断を下すことができます。

Step3: 処方箋を受け取り、薬局で薬をもらう

診察の結果、薬が必要だと判断されれば、医師が「処方箋」を発行してくれます。
その処方箋を街の調剤薬局に持っていけば、国の承認を受けた、安全な医薬品を薬剤師から受け取ることができます。これこそが、唯一安全な駆虫薬の入手ルートなのです。

人間用駆虫薬に関するよくある質問（FAQ）

Q1. 「コンビタントリン錠」はなぜ製造中止になったのですか？

A1. 長年、市販のぎょう虫駆除薬として知られていましたが、製造上の都合により2014年に販売が終了しました。同様に「パモキサン錠」も販売を終了しており、現在、市販で購入できる人間用の駆虫薬はありません。

Q2. Amazonや楽天で人間用の駆虫薬は買えますか？

A2. 買えません。Amazonや楽天などの国内大手通販サイトでは、医師の処方箋が必要な医療用医薬品は販売されていません。もし海外の業者が販売しているケースがあったとしても、それは本記事で解説した「個人輸入」にあたり、全く推奨できません。

Q3. そもそも、ぎょう虫に感染しているかどうかの検査はどこでできますか？

A3. ぎょう虫検査は、主に医療機関で行います。セロハンテープを使った検査キットを渡され、自宅で採取したものを病院に提出するのが一般的です。より詳しい検査方法については、別の記事で解説していますので、そちらもご参照ください。

まとめ：大切なお子さんのために、自己判断での通販は避け、まずは専門家へご相談ください

最後に、この記事の最も重要なポイントをもう一度お伝えします。

• 市販薬はない： 現在、ドラッグストアで買える人間用の駆虫薬は存在しません。
• 通販は危険： ネットでの購入（個人輸入）は、偽造医薬品による健康被害のリスクが非常に高いです。
• 唯一の道は病院へ： 安全な駆虫薬を手に入れる唯一の方法は、医師の診察を受け、処方箋を出してもらうことです。

あなたとお子さんの健康、そして安心した日常を取り戻すために、どうか遠回りに見える道を避けないでください。
病院での数時間の待ち時間や診察は、インターネットで薬を注文する数分の手間に代えることのできない、何物にも代えがたい価値があります。

ためらわずに、まずは近隣の小児科や内科に、相談の電話を一本入れてみることから始めてみましょう。

免責事項

本記事は医薬品の個人輸入を推奨するものではありません。医薬品の使用にあたっては、必ず医師や薬剤師にご相談ください。本記事の情報を用いて生じた一切の損害について、当サイトは責任を負いかねます。

参考文献

医薬品等を海外から購入しようとされる方へ – 厚生労働省
偽造ED治療薬4社合同調査結果 – 日本新薬株式会社, 2016年10月25日