これって疥癬?そのかゆみ、自力で治すのは危険!皮膚科医が教える最短の治し方

皮膚の悩み
山田 裕也 先生

【この記事の監修者】
やまだ皮フ科クリニック 院長
山田 裕也 先生(日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医)

経歴:大学医学部卒業後、同大学病院皮膚科にて勤務。アレルギー性皮膚疾患から感染症まで幅広く診療。やまだ皮フ科クリニックを開院し、地域医療に貢献。Webを通じた正しい医療情報の発信にも力を入れている。

【免責事項】
本記事は、情報提供を目的としており、医学的な診断・治療を代替するものではありません。症状についてご心配な方は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

【これって疥癬?】そのかゆみ、自力で治すのは危険!皮膚科医が教える最短の治し方

夜も眠れないほどのかゆみ、「もしかして疥癬かも…」と不安な中、できれば自力で治したいとお考えですよね。

しかし、結論から言うと、市販薬だけで疥癬を完治させるのは極めて困難です。

この記事では、皮膚科医監修のもと、なぜそれが難しいのか、そして最も確実かつ安全な治療法を解説します。

辛い症状から一日も早く解放されるための、正しい知識を手に入れましょう。

この記事を読めば分かること

  • 疥癬を自力で治すのがなぜ難しいのか、その理由がわかる
  • 皮膚科で行われる標準的な治療法と流れがわかる
  • 治療中に家族や周りの人にうつさないための対策がわかる

もしかして疥癬かも?まずはセルフチェック

👉 このパートをまとめると!

疥癬は夜間に強くなる激しいかゆみと、指の間や手首などにできる赤いブツブツが特徴。症状の写真と見比べて確認しましょう。

「この耐え難いかゆみ、一体何だろう…」そう思ったら、まずはご自身の症状と照らし合わせてみてください。疥癬には、他の皮膚疾患とは異なる特徴的な症状があります。

これって疥癬?特徴的な2つの症状

症状1:夜間に強まる、刺すような激しいかゆみ

疥癬の最も代表的な症状は、夜、布団に入って体が温まると特に強くなる、猛烈なかゆみです。これは、原因となるヒゼンダニが夜間に活発に活動するためと考えられています。

昼間はそれほどでもないのに、夜になると我慢できなくなる、という場合は注意が必要です。

症状2:「疥癬トンネル」と赤いブツブツ(丘疹)

ヒゼンダニのメスは、皮膚の角層内にトンネルを掘って卵を産み付けます。これが「疥癬トンネル」と呼ばれる、少し盛り上がった白っぽい線状の皮疹です。指の間や手首の内側など、皮膚の柔らかい場所によく見られます。

また、ダニのフンや死骸に対するアレルギー反応として、赤いブツブツ(丘疹)が全身に現れることもあります。

具体的には、以下のような皮膚の柔らかい場所に症状が出やすいとされています。

  • 指の間
  • 手首(特に内側)
  • 脇の下
  • へその周り
  • 太ももの内側
  • 外陰部

疥癬と間違えやすい他の皮膚疾患

汗疹(あせも)やアトピー性皮膚炎、虫刺されなど、かゆみを伴う病気はたくさんあります。
しかし、これらの病気と疥癬とでは、治療法が全く異なります。間違ったケアで症状を悪化させないためにも、自己判断は禁物です。


【本題】疥癬は自力で治せる?市販薬の効果と限界

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疥癬の原因であるヒゼンダニを完全に駆除できる市販薬はなく、完治は困難です。かゆみ止めは一時的な症状緩和に留まります。

「病院に行くのは時間もかかるし、何とか市販薬で済ませたい」そのお気持ちは痛いほど分かります。しかし、なぜ疥癬は自力で治すのが難しいのでしょうか。その理由を詳しく見ていきましょう。

なぜ「自力で治す」のが難しいのか?

理由は大きく3つあります。

  1. 原因のヒゼンダニを殺す成分が市販薬にはない
    現在、日本で疥癬の治療薬として承認されている医療用医薬品(飲み薬や塗り薬)に含まれる有効成分は、医師の処方箋がなければ手に入りません。市販薬でヒゼンダニを完全に駆除することはできないのです。
  2. 卵には薬が効きにくく、再発のリスクがある
    疥癬の治療が難しいのは、皮膚の角層内に産み付けられた卵の存在です。多くの薬は成虫には効いても、卵には効果が薄いことがあります。
    そのため、一度治療しても、卵から孵化したダニが再び増殖し、再発を繰り返す可能性があるのです。
  3. 自己判断では角化型疥癬などの重症化を見逃す危険がある
    ごく稀ですが、免疫力が低下している方などがかかると、数百万匹ものダニが増殖する「角化型疥癬」という重症型に移行することがあります。これは非常に感染力が強く、専門的な管理が必要です。自己判断ではこの危険なサインを見逃してしまう恐れがあります。

市販のかゆみ止め(オイラックス®など)は使っていい?

結論から言うと、市販のかゆみ止めは「治療薬」ではなく、あくまで一時的な症状緩和に使うものです。

例えば、市販薬のオイラックス®に含まれる「クロタミトン」という成分には、かゆみを鎮める作用があります。しかし、ヒゼンダニを殺す効果は限定的であり、根本的な解決には至りません。

👨‍⚕️ 専門家からの補足解説

【ポイント】: 市販薬でかゆみが少し和らぐと、治ったと勘違いして放置してしまうケースが最も危険です。

その間にダニは増殖し、家族や周囲へ感染を広げてしまうリスクが高まります。かゆみは体からの重要なサイン。無視せずに専門医に相談してください。

イオウを含む温泉や軟膏は効果がある?

かつてはイオウを用いた治療が行われていた時代もありましたが、現在はより安全で効果の高い処方薬が開発されています。硫黄泉に入ったり、イオウ軟膏を自己判断で塗ったりすることは、効果が不確実であるだけでなく、肌への刺激が強すぎる場合があるため推奨されません。


放置は危険!疥癬の治療を先延ばしにする3つのリスク

👉 このパートをまとめると!

疥癬を放置すると、かゆみの悪化、感染の拡大、重症型(角化型疥癬)への移行リスクがあります。早期治療が重要です。

「そのうち治るだろう」と軽く考えてしまうと、取り返しのつかない事態を招くかもしれません。治療を先延ばしにすることの具体的なリスクを理解しておきましょう。

リスク1:耐え難いかゆみで日常生活に支障が出る

かゆみは、集中力の低下や睡眠不足を引き起こし、仕事や学業のパフォーマンスを著しく低下させます。精神的なストレスも大きく、QOL(生活の質)を大きく損なう原因となります。

リスク2:家族やパートナーなど大切な人にうつしてしまう

疥癬は、肌と肌が直接触れることで感染します。
特に、長時間肌を寄せ合う家族やパートナーには、容易に感染が広がってしまいます。自分一人の問題では済まなくなる可能性があるのです。

リスク3:数百〜数百万匹のダニが寄生する「角化型疥癬」へ重症化する

前述の通り、最も怖いのが「角化型疥癬」への移行です。
日本皮膚科学会の報告によれば、角化型疥癬は通常の疥癬と比べて桁違いにダニの数が多く、感染力が非常に強いとされています。フケのように剥がれ落ちる皮膚にも大量のダニが含まれ、集団感染の原因となることも少なくありません。


怖くない!皮膚科での標準的な疥癬治療(診断〜完治まで)

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皮膚科では、顕微鏡検査で正確に診断し、主に飲み薬や塗り薬で治療します。治療期間の目安は約1ヶ月です。

「病院」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれませんね。しかし、実際の手順を知れば、不安はきっと和らぐはずです。ここでは、皮膚科で行われる一般的な治療の流れをご紹介します。

Step1:問診と検査(何をするの?)

まずは医師が症状について詳しく話を聞き、皮疹の状態を観察します。疥癬が疑われる場合は、デルモスコピーという特殊な拡大鏡で皮膚を観察したり、皮膚の角層を少しだけ採取して顕微鏡でダニや卵の有無を確認したりします。

この検査は、セロハンテープを肌に貼って剥がすようなもので、痛みはほとんどありませんのでご安心ください。

✍️ 筆者の経験からの一言アドバイス

【結論】: 医師に症状を伝える際は「いつから、どこが、どんな時に(特に夜!)、どんな風にかゆいか」をメモしておくとスムーズです。

実は、私自身も過去に原因不明の湿疹で受診した際、焦ってうまく説明できなかった苦い経験があります。それ以来、受診前のメモを徹底しています。これだけで診断の精度がぐっと上がり、医師とのコミュニケーションも円滑になりますよ。

Step2:処方される薬(どんな薬?)

診断が確定すると、主に以下の薬が処方されます。

  • 内服薬: イベルメクチン(商品名:ストロメクトール®)という飲み薬が第一選択です。通常、1〜2週間あけて計2回服用します。
  • 外用薬: フェノトリン(商品名:スミスリン®ローション)という塗り薬も使われます。首から下の全身に塗り、12時間以上おいて洗い流します。

どちらの薬を使うかは、症状やライフスタイルに応じて医師が判断します。

国内の皮膚科で処方されるのは「ストロメクトール®」ですが、海外ではそのジェネリック医薬品である「イベルヒール」も広く利用されています。ジェネリックのため、治療費を抑えられる可能性があります。

参考情報として、治療選択肢の一つを知りたい方は、以下のボタンから詳細を確認してみてください。

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Step3:治療期間と費用の目安

治療期間は、薬を使い始めてからおよそ1ヶ月が目安です。治療後も、アレルギー反応によるかゆみがしばらく続くことがありますが、徐々に改善していきます。

費用は、健康保険の3割負担が適用されるため、診察料と薬代を合わせても数千円程度から治療を始めることができます。


【重要】家族にうつさない!治療と並行すべき感染対策

👉 このパートをまとめると!

治療開始後24時間は個室で過ごし、寝具や衣類は毎日交換・洗濯を。洗濯が難しいものは乾燥機やアイロンで熱処理します。

治療を始めるのと同時に、同居している家族などへの感染を防ぐ対策も非常に重要です。ポイントを押さえて、感染拡大を食い止めましょう。

患者本人との接し方

疥癬の治療を開始すれば、24時間後には感染力はほぼなくなると言われています。ただし、念のため、治療開始後しばらくは長時間の肌の接触は避け、念のため寝室を分けたり、タオルや寝具の共用を避けたりするとより安心です。

寝具・衣類の洗濯と消毒

ヒゼンダニは熱に弱いため、肌に直接触れたシーツや下着、パジャマなどは、毎日交換し、50℃以上のお湯に10分以上浸してから洗濯するか、洗濯後に高温設定の乾燥機にかけるのが最も効果的です。

表: アイテム別の洗濯・消毒方法の早見表
アイテム 推奨処理(◎) 次善策(○) その他
下着、パジャマ、タオル 50℃以上の熱湯処理後、洗濯 高温乾燥機 スチームアイロン
シーツ、枕カバー 毎日交換し、上記と同様に処理 高温乾燥機
洗濯できない衣類・布製品 高温乾燥機にかける スチームアイロンをかける ビニール袋で密閉し2週間放置
布団、マットレス 布団乾燥機をかける 全体に丁寧に掃除機をかける

部屋の掃除

ダニが落ちている可能性を考え、部屋の隅々まで丁寧に掃除機をかけることを心がけましょう。特別な消毒薬を使う必要はなく、通常の掃除で十分です。


疥癬に関するよくある質問(FAQ)

👉 このパートをまとめると!

疥癬に関するよくある疑問に、専門家がQ&A形式で簡潔にお答えします。

最後に、疥癬について多くの方が疑問に思う点をまとめました。

Q1. 疥癬は自然治癒しますか?

A1. いいえ、自然に治ることはありません。 ヒゼンダニは人の皮膚の上でしか生きられず、繁殖を続けます。放置すれば症状は悪化し、感染を広げるだけなので、必ず治療が必要です。

Q2. 治療中、会社や学校は休むべきですか?

A2. 通常の疥癬であれば、治療を開始すれば出勤・登校は可能です。法律で出席停止が定められている病気ではありません。ただし、集団生活の場では、事前に職場や学校の担当者に状況を伝えて相談することが望ましいでしょう。

👨‍⚕️ 専門家からの補足解説

【ポイント】: 角化型疥癬の場合は感染力が非常に強いため、医師の指示に従い、出勤・登校を控える必要があります。

通常の疥癬か角化型疥癬かの判断も含め、自己判断せず、必ず医師に相談してください。

Q3. ペットからうつることはありますか?

A3. 犬や猫にも「ヒゼンダニ症」というよく似た病気がありますが、原因となるダニの種類が人間とは異なります。そのため、ペットから人にうつったとしても、そのダニは人の皮膚の上では繁殖できず、一時的なかゆみが出る程度で自然にいなくなります。


治療中のかゆみはどうすればいい?

👉 このパートをまとめると!

治療を開始しても、アレルギー反応によるかゆみは暫く続くことがあります。処方されるかゆみ止めを使い、肌を掻き壊さないようにしましょう。

処方薬でダニを退治しても、すぐにかゆみがゼロになるわけではありません。これは、残ったダニの死骸やフンに対するアレルギー反応が続くためです。このかゆみは、通常1〜2週間かけて徐々に落ち着いていきます。

この期間のかゆみに対しては、医師から別途かゆみ止めの飲み薬や塗り薬が処方されることがあります。辛いときは我慢せず、処方された薬を適切に使いましょう。肌を掻き壊すと、そこから細菌が入って二次感染を起こす可能性もあるため、爪を短く切っておくことも大切です。


まとめ:辛いかゆみは専門家へ。それが一番の近道です

この記事の重要なポイントを、もう一度振り返りましょう。

  • 疥癬の自力での完治は困難で、市販薬はかゆみを一時的に和らげる対症療法にすぎません。
  • 放置すると症状の悪化や周囲への感染拡大のリスクがあります。
  • 皮膚科では保険適用で効果の高い治療が受けられ、それが辛いかゆみからの最速の脱出ルートです。

「病院に行くのは恥ずかしい、面倒だ…」
その一歩が踏み出せない気持ちは、本当によく分かります。

しかし、その一歩を踏み出すことこそが、あなた自身と、あなたの周りの大切な人を守るための、最も確実で誠実な方法なのです。専門家の力を借りることは、決して遠回りではありません。むしろ、一番の「近道」です。

お近くの皮膚科を探して、まずは相談の予約から始めてみませんか。

【治療の選択肢】
国内での標準治療は皮膚科での処方ですが、治療選択肢の一つとして海外のジェネリック医薬品について情報を知りたい方は、下記より詳細を確認できます。

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この記事を書いた人:ケン

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